Web制作の予算、どう決めればいい?相場と考え方

コスト最適化基礎知識発注準備

はじめに

「上司から『Webサイトを作ってほしい』と頼まれたけれど、予算をどう考えればいいのか分からない」——Web制作担当に抜擢されたばかりの方から、こんな声をよく聞きます。

予算設定を誤ると、開発途中で資金不足に陥ったり、逆に過剰な投資をしてしまったりと、プロジェクト全体に大きな影響が出てしまいます。しかし、Web制作が初めての場合、「何にいくらかかるのか」「どれくらいが妥当なのか」の判断基準を持つことは容易ではありません。

この記事では、Web制作の予算をどう考えるべきか、社内でどう説明すればいいのかを、実務的な視点から解説します。予算決定の3つのステップと、陥りがちな落とし穴を知ることで、御社に最適な予算設定ができるようになります。

Web制作の予算が読めない3つの理由

Web制作の予算が不透明に感じるのは、実は当然のことです。なぜなら、予算を左右する要素が複数あり、それぞれの選択によって金額が大きく変動するからです。

理由1:開発手法の選択肢が複数ある

WordPressを使うのか、フルスクラッチで開発するのか。さらにWordPressでも、既存テーマを活用するのか、オリジナルテーマを開発するのかで、費用は大きく変わります。それぞれの手法には得意・不得意があり、御社のプロジェクトに何が適しているかによって、適正な予算水準が異なります。

理由2:要件の明確度による見積もりの幅

「どんな機能が必要か」が明確であれば、見積もりも精密になります。逆に要件が曖昧だと、制作会社は最小構成から最大構成まで幅を持たせた見積もりを出さざるを得ません。同じ「コーポレートサイト」という言葉でも、5ページの簡素なサイトから50ページの多機能サイトまで、その中身は千差万別です。

これらの理由を理解することで、「なぜ見積もりに幅があるのか」が分かり、適切な予算設定への第一歩となります。

理由3:プロジェクトのスケジュールによる影響

通常の開発スケジュールと特急対応では、必要なコストが変わってきます。特急対応の場合、短期間で集中的にリソースを確保する必要があるため、人員配置のコストが割高になります。「来月のイベントまでに」といった短納期の要望は、それ自体が予算に影響する要素なのです。

開発手法別の費用相場とサーバ環境による違い

まずは、基本的な相場観を把握しましょう。Web制作の費用は、開発手法によって大きく異なります。

WordPress開発の場合

既存テーマ活用型

  • 初期費用:10万円〜30万円程度
  • 開発期間:1ヶ月程度
  • 運用保守費:月額1〜3万円程度

既にデザインされたテーマをベースに、御社の情報を組み込んでいく方法です。デザインの自由度は限られますが、コストを抑えて短期間でサイトを立ち上げられます。

オリジナルテーマ開発型

  • 初期費用:30万円〜200万円程度
  • 開発期間:2ヶ月以上
  • 運用保守費:月額1〜5万円程度

完全にオリジナルのデザインと機能を実装する方法です。御社のブランドイメージに合わせた独自性の高いサイトを構築できます。

フルスクラッチ開発の場合

  • 初期費用:200万円〜1,000万円以上
  • 開発期間:3ヶ月〜1年以上
  • 運用保守費:月額3〜20万円以上

ゼロからプログラムを書いて構築する方法です。複雑な業務システムとの連携や、独自のアルゴリズムが必要な場合に適しています。

特殊要因による追加コスト

通常のWeb制作では、レンタルサーバやシンプルなVPS(仮想専用サーバ)での運用を前提としており、上記の相場に含まれています。

ただし、以下のような特殊な要件がある場合は、追加で100万円〜300万円以上のコストが発生することがあります:

  • AWS等のクラウドサービスを使った複数サーバ構成
  • CDNなどの負荷分散や冗長化による高可用性設計
  • 大量アクセスに耐えるスケーラブルなインフラ設計

御社の事業規模、想定アクセス数、システムの重要度によって、どの水準の設計が必要かを判断する必要があります。

予算を決める3つのステップ

相場を知っただけでは、まだ予算は決められません。御社に最適な予算を導き出すには、次の3つのステップを踏むことをお勧めします。

ステップ1:目的を明確にする

「何のためにWebサイトを作るのか」——この問いへの答えが、予算の起点となります。

目的によって、必要な機能も予算水準も変わってきます。例えば、

  • 採用強化が目的:採用ページの充実、社員インタビュー、動画コンテンツなど
  • 問い合わせ増加が目的:問い合わせフォームの最適化、事例紹介、FAQ充実など
  • ブランディングが目的:高品質なビジュアル、独自性の高いデザイン、ストーリー性など

目的が明確であれば、「この機能は必要」「この機能は優先度が低い」という判断ができ、予算の使い道が見えてきます。

ステップ2:機能を「必須」「段階的」「将来的」に分類する

すべての機能を初期リリースに詰め込む必要はありません。機能を次の3つに分類してみましょう。

必須機能:サイト公開時に絶対に必要な機能

  • 基本的な会社情報ページ
  • 問い合わせフォーム
  • スマートフォン対応

段階的実装でも構わない機能:あれば良いが、後からでも追加できる機能

  • ブログ・お知らせ機能の高度化
  • 事例紹介ページの拡充
  • 多言語対応

将来的に検討する機能:今は必要ないが、将来的には欲しい機能

  • 会員システム
  • ECカート機能
  • 予約システム

この分類により、初期投資を抑えつつ、運用フェーズで継続開発費を組み込むことで、段階的に機能を拡張していくアプローチが可能になります。

例えば、Wordpress開発で初期投資50万円 + 月額20万円(保守2万円 + 継続開発18万円 x 6ヶ月)という形と、初期投資150万円で一括開発という形、どちらが御社のキャッシュフローに合うかを検討できます。

ステップ3:予備費の確保を検討する

多くの方が見落としがちですが、予備費の確保は非常に重要です。

Webサイトの要件は、実際に形になっていく過程で「ここはもっとこうしたい」「この機能も必要だった」と気づくことが多いものです。これは開発プロセスの自然な流れです。

本予算の30%程度の予備費を確保しておくと、こうした追加要望に柔軟に対応でき、開発を止めることなくスムーズに進行できます。結果として、より満足度の高いサイトが完成します。

なお、予備費を使わなかった場合は、他の用途に回すこともできます。「保険」として持っておくという考え方です。

予算設定で陥りがちな3つの落とし穴

経験の浅い担当者が予算設定で失敗しがちなパターンを知っておくことで、同じ轍を踏まずに済みます。

落とし穴1:「他社の成功事例の金額」をそのまま自社に当てはめてしまう

「A社は50万円でコーポレートサイトを作ったらしい」という情報を聞いて、「うちも50万円で」と考えてしまうケースです。

しかし、その事例の裏には見えない前提条件があります。ページ数、必要な機能、デザインのこだわり、納期——これらすべてが異なれば、当然金額も変わります。同じ「コーポレートサイト」という言葉でも、その中身は千差万別なのです。

他社事例は参考程度にとどめ、御社固有の要件をベースに予算を考えましょう。

落とし穴2:初期費用だけで判断し、運用保守費用を見落とす

「100万円で作れるなら」と初期費用だけで判断してしまい、完成後の運用について何も考えていなかったというケースも見られます。

Webサイトは完成して終わりではなく、継続的に運用していく必要があります。WordPressサイトの場合、基本的なセキュリティアップデートは自動で行われるため、最低限の運用は可能です。

ただし、次のような対応が必要になった場合、自社で対応するか、外部に依頼するかを決めておく必要があります:

  • コンテンツの更新や修正
  • プラグインのアップデート対応
  • デザインの微調整
  • トラブル発生時の復旧対応
  • セキュリティインシデントへの対応

もし自社での対応が難しい場合は、運用保守契約(月額1〜5万円程度)を検討することになります。年間で12〜60万円の継続費用となりますが、専門家による定期的なチェックと迅速なトラブル対応が受けられるというメリットがあります。

予算を検討する際は、初期費用だけでなく「完成後の運用をどうするか」という視点も含めて、トータルで考えることをお勧めします。

落とし穴3:「予算ありき」で要件を無理に詰め込む

「予算は50万円しかないけれど、できるだけ多くの機能を入れたい」という考え方も危険です。

限られた予算で無理に多機能を求めると、すべてが中途半端な仕上がりになってしまいます。結果として、目的を達成できないサイトが完成し、作り直しや大幅な改修が必要になることも。

予算に制約がある場合こそ、優先順位を明確にし、「これだけは確実に実現する」という絞り込みが重要です。段階的に実装していく方が、結果的にプロジェクトは成功します。

社内で予算を説明するときの4つのポイント

予算が固まったら、次は上司や経営層への説明です。ここで押さえるべきポイントを4つご紹介します。

ポイント1:投資対効果(ROI)の視点で語る

「Web制作に◯◯万円かかります」という説明だけでは、経営層の理解は得にくいものです。

代わりに、投資に対してどんな価値が生まれるのかを具体的に説明しましょう。例えば:

  • 採用サイトの場合:「求人広告費が年間◯◯万円かかっているが、自社サイトでの採用を強化することで、その一部を削減できる可能性があります」
  • 問い合わせ強化の場合:「現在、月間◯件の問い合わせがあり、成約率が◯%です。サイト改善により問い合わせが月◯件増加すれば、年間で◯件の新規顧客獲得につながります」
  • ブランディングの場合:「競合他社と比較して見劣りするサイトでは、商談の初期段階で不利になります。第一印象の改善による機会損失の防止」

このように、御社の現状の数値をベースに、改善の方向性を示すアプローチが説得力を持ちます。

ポイント2:競合他社のWeb投資状況を示す

同業他社がどの程度のレベルのWebサイトを持っているかを示すことも有効です。

「競合のB社・C社のサイトと比較すると、当社のサイトは情報量や機能面で見劣りします。同業他社が顧客獲得のためにWebに投資している中、当社だけが旧態依然としたサイトでは、商談機会の損失につながります」

また、一般的に製造業では売上高の0.5〜1%程度、サービス業では1〜3%程度を広告宣伝費として投じています。御社の売上規模を基準にして、Web施策を含めた適切な広告宣伝費を算出することも可能になります。

このように、具体的な競合サイトとの比較業界標準の投資水準を組み合わせることで、説得力のある説明ができます。

ポイント3:段階的投資プランの提示

一括での大きな投資が難しい場合、段階的な投資プランを提案するのも有効です。

例えば:

  • 初期フェーズ:50万円で最低限の機能でローンチ
  • 運用フェーズ:月額10万円で継続開発と保守(年間120万円)
  • 第2フェーズ:半年後に30万円で機能拡張

このように段階を分けることで、初期の予算承認を得やすくなり、実際の運用データを見ながら次の投資判断ができます。

ポイント4:予備費の必要性を事前に説明する

予備費を予算に含める場合、「なぜ必要なのか」を事前に説明しておくことが重要です。

「開発を進める中で、より良いサイトにするための仕様追加や改善が発生する可能性があります。その際に柔軟に対応できるよう、本予算の30%程度の予備費を確保させていただきたい」

このように説明しておけば、開発中に追加要望が出た際も、再稟議の手間なくスムーズに対応できます。もちろん、予備費を使わなければ他の用途に回せることも伝えておきましょう。

予算が限られているときの現実的な選択肢

理想的な予算が確保できない場合でも、工夫次第で効果的なWebサイトを構築できます。

選択肢1:WordPress + 既存テーマの活用で初期費用を抑える

オリジナルテーマ開発ではなく、既存テーマを使って構築する方法を選べば、初期費用を大幅に抑えられます。10〜30万円程度の予算でも、基本的なコーポレートサイトは十分に構築可能です。

デザインの独自性は限られますが、「まずは情報発信できる場を作る」という目的であれば、十分に機能します。

選択肢2:コア機能のみでMVPローンチし、段階的に拡張

MVP(Minimum Viable Product:実用最小限の製品)という考え方を取り入れ、まずは最小限の機能でローンチし、反応を見ながら段階的に機能を追加していく方法です。

具体的には:

  • 初期投資:80〜100万円でコア機能のみ実装
  • 運用費:月額15万円(保守2万円 + 継続開発13万円)を設定
  • 3ヶ月ごとに優先度の高い機能から順次追加

このアプローチなら、初期投資を抑えつつ、実際の運用データに基づいて最適な機能拡張ができます。

選択肢3:デザインはシンプルに、機能に予算を集中

限られた予算の中では、すべてに均等に投資することはできません。「見た目の華やかさ」と「目的達成のための機能」、どちらを優先すべきでしょうか。

多くの場合、答えは後者です。シンプルで清潔感のあるデザインでも、必要な機能がしっかり実装されていれば、サイトは十分に目的を果たします。

弊社では、御社の予算規模をお伝えいただければ、その中で最大の効果を生み出すための現実的なプランニングをご提案できます。

まとめ:予算は「相場」ではなく「御社の目的」から逆算する

Web制作の予算を考える際、「いくらが相場か」という問いから始めてしまいがちですが、それは正しいアプローチではありません。

最も重要なのは、「何を実現したいのか」という御社の目的です。そこから必要な機能を洗い出し、優先順位をつけ、段階的な実装も視野に入れながら、適正な予算を導き出す——これが正しい順序です。

改めて、予算決定の3つのステップを確認しましょう:

  1. 目的を明確にする:採用強化、問い合わせ増加、ブランディングなど
  2. 機能を分類する:必須機能、段階的実装可能な機能、将来的な機能
  3. 予備費を検討する:本予算の30%程度で開発をスムーズに

そして、予算が限られている場合でも、段階的リリースや既存テーマの活用など、現実的な選択肢は存在します。キャッシュフローを意識した立ち上げと運用設計により、無理のない投資計画が可能です。

もし判断に迷われているなら、まずは専門家に相談してみることをお勧めします。弊社では、御社の目的や予算状況をお伺いした上で、最適なプランをご提案いたします。予算の考え方から一緒に整理していくことも可能です。

予算のご相談も無料で承ります。まずはお気軽にお問い合わせください。