はじめに
「Webサイト立ち上げの担当をお願いできる?」
上司からのこの一言で、急にWeb制作の責任者になってしまった。社内からは「いい感じのサイトを作って」「競合に負けないものを」と期待の声。でも正直なところ、何から手をつければいいのか分からない…。
HTMLって何?CMSって必要?そもそも予算はどれくらい必要?調べれば調べるほど、知らない言葉が増えていく。「失敗したらどうしよう」「恥をかきたくない」そんな不安で、最初の一歩が踏み出せずにいませんか?
実は、Web制作発注には明確な手順があります。完璧な知識がなくても、要件が曖昧でも、一歩ずつ進めば必ず形になります。この記事では、初めての発注でも迷わずに進められる、具体的なステップをご紹介します。
なぜWeb制作発注は難しく感じるのか?3つの「見えない壁」

壁1:「何を作るか」が社内でも曖昧
「とりあえず今風のサイトを作って」「競合のA社みたいな感じで」
社内からこんな指示を受けていませんか?実はこれ、多くの企業で起きている現象です。経営層は「デジタル化」「DX推進」と言うものの、具体的に何をすればいいのかは担当者任せ。営業部門は「もっと問い合わせが来るサイトに」と言うけれど、どうすれば問い合わせが増えるのかは分からない。
この曖昧さこそが、最初の壁です。「明確にしなければ」というプレッシャーが、かえって動けなくさせてしまいます。でも実は、最初から100%明確である必要はありません。制作会社と一緒に整理していけばいいのです。
壁2:技術用語の海で溺れそうになる
WordPress、レスポンシブデザイン、SSL、CMS、API連携、SEO対策…
少し調べただけで、見慣れない専門用語が次々と出てきます。「これを全部理解しないと発注できない」と思い込んでしまい、勉強しようとしても、どこから手をつければいいのか分からない。結果として、情報収集の迷路に入り込んでしまいます。
しかし、実際のところ、初期段階ですべての技術用語を理解する必要はありません。むしろ、分からないことは制作会社に聞きながら進める方が、効率的で確実です。餅は餅屋。技術のプロに任せるべきところは任せましょう。
壁3:「失敗したらどうしよう」というプレッシャー
Web制作には数十万円から数百万円の予算がかかります。初めて大きな予算を任される重圧。「もし失敗したら…」「期待を裏切ったら…」という不安が頭をよぎります。
この恐怖心理は、心理学でいう「損失回避バイアス」です。人は得るものより失うものに強く反応する傾向があります。だからこそ、リスクを恐れるあまり決断できなくなってしまうのです。
でも、段階的に進めることで、このプレッシャーは大幅に軽減できます。いきなり完璧を目指すのではなく、小さな一歩から始めればいいのです。
実は簡単!Web制作発注の「3つのステップ」
ステップ1:現状の「困りごと」を書き出す(所要時間:30分)
難しく考える必要はありません。今、御社のWebサイトで困っていることを、箇条書きでメモに書き出してみてください。
- 「サイトが古くて、スマホで見づらい」
- 「更新が面倒で、最新情報が載せられない」
- 「お客様から『サイトが分かりにくい』と言われた」
- 「採用ページがなくて、求職者に情報が伝えられない」
- 「そもそもサイトがない」
こんな素朴な内容で構いません。完璧な要件定義書を作ろうとすると、かえって本質から離れてしまいます。制作会社は、こうした「困りごと」から、御社に必要な機能や構成を導き出すプロフェッショナルです。一緒に整理していけばいいのです。
ステップ2:社内の「期待」を3人に聞く(所要時間:各15分)
次に、関係者の声を簡単に集めてみましょう。難しいヒアリングシートは不要です。以下の3人に、この質問をするだけです。
「新しいWebサイトができたら、どんなことができるようになったら嬉しいですか?」
- 上司:予算承認の決裁権者の期待を確認
- 営業・販売部門の担当者:顧客との接点で感じている課題
- 管理部門・サイト運用の担当者:運用面での要望
メモで十分です。録音も議事録も不要。ざっくりとした期待値を掴むことが目的です。「売上アップに貢献してほしい」「お客様に褒められるサイトにしたい」「更新を簡単にしたい」など、抽象的な答えでも問題ありません。これらの声が、後々の判断基準になります。
ステップ3:制作会社に「相談」の連絡をする(所要時間:5分)
ここが最も重要で、最も簡単なステップです。
「初めての発注で、何から始めればいいか分からない状態ですが、相談に乗っていただけますか?」
この一言で十分です。むしろ、素直に現状を伝えた方が、制作会社も適切なサポートができます。優良な制作会社であれば、御社の状況に合わせて、丁寧にナビゲートしてくれるはずです。
今すぐできる!最初の一歩チェックリスト
発注前の準備として、以下の項目を確認してみてください。全てではなくても構いませんので、可能な範囲で整理しておくと、制作会社との対話がスムーズになります。
□ 現在のサイトのURL(あれば)をメモ → 現状分析の出発点になります
□ 大まかな予算感を上司に確認 → 「50万円以内」「100万円程度」といったレベルでOK
□ いつまでに完成させたいか希望を整理 → 「年度内」「半年以内」など、おおよその期限
□ 競合他社のサイトを2-3個ピックアップ → 「こんな感じがいい」という参考イメージ
□ 社内の決裁フローを確認 → 誰の承認が必要か、稟議はどう進めるか
完璧を求める必要はありません。これらの情報が一部でも整理できていれば、十分にスタートできます。制作会社は、不足している情報を一緒に補完しながら進めてくれます。
発注前の「よくある勘違い」トップ3
勘違い1:「完璧な仕様書がないと相談できない」
これは最も多い誤解です。実際のところ、プロの制作会社にとって、要件整理からサポートすることは通常業務の一部です。
むしろ、御社だけで仕様を固めてしまうより、制作のプロの視点を入れながら整理した方が、より良い成果につながります。「こんなことがしたい」という想いさえあれば、技術的な実現方法は制作会社が提案してくれます。曖昧な段階で相談することは、恥ずかしいことではありません。
勘違い2:「相見積もりは必ず3社以上取らないといけない」
確かに、社内ルールで相見積もりが必要な場合もあるでしょう。しかし、まず1社とじっくり相談して、要件を整理してから他社に声をかける方法もあります。
数をこなすことが目的ではありません。制作会社との対話の質が重要です。信頼できそうな1社と深く話し合い、その上で比較検討が必要と判断したら、他社にも相談する。この順序でも全く問題ありません。
勘違い3:「技術的なことを理解してからでないと恥ずかしい」
「CMSって何ですか?」「レスポンシブって必要ですか?」
こんな質問をすることを恥ずかしいと感じる必要はありません。制作会社は、技術を分かりやすく説明することも仕事のうちです。分からないことを分からないと言える関係の方が、プロジェクトはスムーズに進みます。
知らないものを知らないまま進めるより、素直に聞く方が、お互いにとって効率的です。優良な制作会社は、専門用語を使わずに説明することができます。
制作会社への最初の問い合わせ、何を伝えればいい?
最低限伝えたい5つのポイント
- 御社の業種と規模 「製造業で従業員50名程度の会社です」
- サイトを作る目的(ざっくりでOK) 「会社の信頼性を高めたい」「採用を強化したい」
- 大まかな予算感 「100万円以内で検討しています」「予算は未定ですが、まず相場を知りたい」
- 希望納期 「3月までに公開したい」「特に急いではいません」
- 「初めての発注」であること これを伝えることで、制作会社も配慮したコミュニケーションをしてくれます
こう伝えれば制作会社も動きやすい(例文付き)
以下は、実際の問い合わせ例文です。これをベースに、御社の状況に合わせてアレンジしてください。
はじめまして、〇〇会社の△△と申します。
この度、弊社のウェブサイト制作を検討しており、ご相談させていただきたくご連絡いたしました。
弊社は【業種】を営んでおり、従業員【〇名】程度の規模です。現在【既存サイトのリニューアル/新規サイトの立ち上げ】を検討しています。
主な目的は【会社の信頼性向上/採用強化/お客様への情報提供】で、【○月頃】までの公開を希望しています。予算は【○○万円程度/相談しながら決めたい】と考えています。
実は、ウェブ制作の発注は初めてで、何から準備すればよいか分からない状況です。まずは御社にご相談させていただき、進め方についてアドバイスをいただければ幸いです。
お忙しいところ恐れ入りますが、一度お打ち合わせの機会をいただけませんでしょうか。
この程度の情報があれば、制作会社は適切な提案準備ができます。完璧である必要はありません。対話の第一歩として十分です。
まとめ:完璧を求めずに、まず一歩を踏み出そう
Web制作発注の最初の一歩は、実は「相談すること」です。
完璧な仕様書も、深い技術知識も、最初から必要ありません。制作会社は御社のパートナーとして、一緒に考え、形にしていく存在です。「分からないことが何なのか分からない」状態でもプロがナビゲートしてくれます。
今、この記事を最後まで読んだ御社は、すでに第一歩を踏み出しています。Web制作発注への不安が、少しでも和らいだのではないでしょうか。次は、実際に問い合わせをするだけです。
最初の問い合わせは緊張するかもしれません。でも、その小さな一歩が、御社のビジネスを大きく前進させる第一歩になります。
弊社では、初めてWeb制作を発注される企業様のご相談を、丁寧にサポートしています。「何から始めればいいか分からない」という段階でも、お気軽にご連絡ください。御社の状況に合わせた最適な進め方を、一緒に考えさせていただきます。