WordPress開発とは?見積もり前に知っておくべき基礎知識

判断・選択基礎知識技術理解

はじめに

「WordPressでサイトを作りたい」と複数の制作会社に相談したら、A社は20万円、B社は100万円、C社は200万円の見積もりが返ってきた——こんな経験はありませんか?

同じ「WordPress開発」を依頼したはずなのに、なぜこれほど金額が違うのでしょうか。実は「WordPress開発」という言葉には複数の意味があり、その違いを理解していないと、予算オーバーや機能不足といった問題に直面するリスクがあります。

この記事では、WordPress開発を初めて発注する企業担当者の方に向けて、見積もりを正しく理解し、御社のプロジェクトに最適な選択をするための基礎知識を解説します。

WordPressを構成する3つの要素

まず、WordPressがどのように成り立っているのかを理解しましょう。WordPress開発の見積もりの違いは、以下の3つの要素をどう扱うかで決まります。

テーマ

テーマは、サイトの見た目と基本的な機能をセットにした「サイトの骨格」です。家のリフォームで例えるなら、「和風」「モダン」「北欧風」といったデザインスタイルだけでなく、間取りや設備の基本構成まで含めたパッケージを選ぶようなものです。

WordPressでは、無料・有料で数千種類のテーマが世界中に公開されており、そこから選んで使うこともできますし、御社専用のオリジナルテーマを開発してもらうこともできます。既成品のテーマを使えば費用を抑えられますが、デザインや機能の自由度は限られます。一方、オリジナルテーマは費用がかかりますが、完全に御社の要望通りのデザインと機能を実現できます。

プラグイン

プラグインは、機能を追加する「拡張パーツ」です。家で例えるなら、後から追加できる「食洗機」や「ビルトイン家電」のようなものです。

問い合わせフォーム、SEO対策、セキュリティ強化など、WordPress本体にはない機能をプラグインで追加できます。無料・有料で数万種類が存在し、多くの一般的な機能は既存のプラグインで対応可能です。ただし、複雑な独自機能が必要な場合は、プラグイン自体をカスタム開発することもあります。

カスタマイズ

カスタマイズは、既存のテーマやプラグインを御社の要望に合わせて改造すること、または完全にゼロからオリジナルで開発することを指します。

既製品のテーマを少し調整するだけの軽微なカスタマイズから、完全オリジナルのテーマやプラグインを開発する大規模なカスタマイズまで、その範囲は非常に広いのが特徴です。この「カスタマイズの深さ」が、見積もり金額を大きく左右します。

なぜ見積もりに大きな差が生まれるのか

これらの3要素の組み合わせ方によって、開発費用は数十万円から数百万円まで、10倍以上の差が生まれます。

例えば、既存のテーマをそのまま使い、既存のプラグインを組み合わせるだけなら、開発期間は短く費用も抑えられます。一方、完全オリジナルのテーマを開発し、独自機能のプラグインも作り込むとなれば、開発期間は数ヶ月に及び、費用も数百万円規模になる場合があります。

問題は、どの組み合わせが御社のプロジェクトに適切なのかを判断できないことです。「できるだけ安く」と既存テーマを選んだものの、実現したい機能が足りず後から追加開発で高額になったり、逆に「オリジナルにこだわりたい」と大規模開発を選んだものの、実は既存テーマで十分だったというケースも少なくありません。

もしも、判断が難しい場合は「サイトの目的」や「実現したいこと」をお気軽にご相談ください。 最適なプランをご提案致します。

WordPress開発の2つのアプローチ

御社のプロジェクトに最適な選択をするために、WordPress開発を大きく2つのアプローチに分けて理解しましょう。

アプローチ1:既存テーマ活用型

既に完成されているテーマを導入し、必要に応じてプラグインを追加する方法です。

何ができるのか

  • コーポレートサイト、ブログ、シンプルなECサイトなど、一般的なWebサイトに必要な機能はほぼカバーできます
  • 既存のプラグインで、問い合わせフォーム、SEO対策、セキュリティ対策、簡単な予約機能なども追加可能
  • テーマの設定範囲内で、色・ロゴ・レイアウトの調整ができます

費用感と納期

  • 初期費用:10万円〜30万円程度
  • 開発期間:1ヶ月程度
  • 運用保守費:月額1〜3万円程度

メリット

  • 開発費用を大幅に抑えられる
  • 短期間でサイトを立ち上げられる
  • 実績のあるテーマを使えば、品質や安定性が保証されている
  • アップデートやセキュリティ対応も開発元が継続的に行っている

デメリット

  • デザインの自由度に限界がある(テーマの設計思想の範囲内)
  • 複雑な独自機能の実装は困難
  • 他社と似たデザインになる可能性がある
  • 将来的に実現したい機能がテーマの構造上不可能な場合がある

こんな場合に向いています

  • 初めてのWebサイト構築で、まずは標準的な機能で十分
  • 予算や納期に限りがある
  • デザインより機能性やコストを重視したい

アプローチ2:オリジナルテーマ開発型

御社専用のテーマをゼロから設計・開発する方法です。

何ができるのか

  • 完全オリジナルのデザインを実現できます
  • 将来的な拡張を見据えた柔軟な設計が可能です
  • 生成AIを活用した効率化など、標準機能では難しいカスタマイズが可能です

費用感と納期

  • 初期費用:30万円〜200万円程度
  • 開発期間:2ヶ月〜
  • 運用保守費:月額1〜5万円程度

メリット

  • デザインに一切の制約がなく、ブランドイメージを完全に表現できる
  • 御社のニーズに合わせた独自機能を実装できる
  • 競合他社との明確な差別化が可能
  • 既存テーマやプラグインの開発元に依存しない構成ができる

デメリット

  • 開発費用が高額になる
  • 開発期間が長期化する
  • 要件定義や仕様決定に工数がかかる
  • 場合によっては運用保守も開発会社との継続的な関係が必要

こんな場合に向いています

  • ブランドイメージを明確に表現したい
  • 既存テーマでは実現できない独自のデザイン表現が必要
  • コンテンツの見せ方や情報設計にこだわりたい
  • 既存のテーマやプラグインの制約を受けずに自由に設計したい

比較表で見る2つのアプローチ

項目既存テーマ活用型オリジナルテーマ開発型
初期費用10万円〜30万円30万円〜200万円程度
開発期間1〜2ヶ月2ヶ月〜
デザイン自由度テーマの設計範囲内完全自由
独自機能既存プラグインの範囲内制限なし
運用保守費月額1〜3万円月額1〜5万円程度
競合との差別化限定的完全差別化可能
将来の拡張性テーマの設計に依存柔軟に対応可能

判断のための3つの質問

どちらのアプローチを選ぶべきか迷ったら、この3つの質問に答えてみてください。

質問1:デザインと機能に、どこまで投資できますか?

  • 最小限のコストで標準的なサイトを構築したい → 既存テーマ活用型
  • 独自性の高いデザインのために投資できる → オリジナルテーマ開発型

初期費用が5倍、開発期間が3倍違うことも珍しくありません。現実的な予算と納期を見極めることが第一歩です。

質問2:実現したい機能は一般的ですか、それとも独自性が高いですか?

  • 一般的(問い合わせ、ブログ、商品紹介など) → 既存テーマ活用型
  • 独自性が高い(特殊な検索、マッチング、業務システム連携など) → オリジナルテーマ開発型

既存のプラグインで対応できる機能なら、わざわざ開発する必要はありません。逆に、御社独自のビジネスロジックを実装する場合は、オリジナル開発が必要になります。

質問3:ブランドイメージの独自性をどこまで重視しますか?

  • 機能性やコストを優先 → 既存テーマ活用型
  • 唯一無二のデザインで差別化したい → オリジナルテーマ開発型

既存テーマでも、色やロゴ、一部レイアウトの調整は可能です。ただし、完全にオリジナルのデザイン表現を求めるなら、オリジナル開発が適しています。

よくある失敗パターン

判断を誤ると、後から大きな問題に直面します。実際によくある失敗パターンを知っておきましょう。

失敗パターン1:「とにかく安く」で既存テーマを選んだが…

採用サイトで、独自のエントリーフォームや応募者管理機能、ブランドイメージを強く打ち出すデザインが必要だったにもかかわらず、費用を抑えるためだけに既存テーマを選択。テーマのデザイン構造が固定されており、希望するビジュアル表現が実現できず、結局CSSの大幅なカスタマイズと独自機能の追加開発の二度手間と費用が発生。最初からオリジナルテーマで設計すべきケースでした。

失敗パターン2:「オリジナルにこだわって」高額開発を選んだが…

スタートアップ企業のコーポレートサイトで、会社概要・サービス紹介・ブログという標準的な構成なのに、「他社と差別化したい」という理由だけでオリジナルテーマを開発。開発費は150万円、納期も3ヶ月かかった。

しかし完成後に振り返ると、実現したデザインは既存テーマでも十分表現できる範囲のものだった。限られた予算のスタートアップにとって、その費用をマーケティングや事業開発に投資すべきだったと後悔することに。既存テーマで十分だったケースです。

失敗パターン3:要件を整理せずに発注してしまった

「WordPressで作りたい」とだけ伝えて発注したが、制作会社によって提案内容が全く異なり、比較検討ができない状態に。結局、一番安い会社を選んだものの、必要な機能が実装されておらず、追加開発で結局高額に。最初に要件を整理しておくべきでした。

まとめ:最適な選択をするために

WordPress開発には、「既存テーマ活用型」と「オリジナルテーマ開発型」という2つの大きなアプローチがあります。どちらが優れているということはなく、御社のプロジェクトに合った選択をすることが最重要です。

改めて選択のポイントを整理すると:

  • 予算・納期が限られている、一般的な機能で十分 → 既存テーマ活用型
  • 独自機能が必須、予算も確保できている → オリジナルテーマ開発型
  • 迷ったら、まず実現したい機能を具体的にリストアップする

大切なのは、曖昧なイメージではなく、「サイトの目的は何か?」「どんな機能が必要なのか」「どう運用していくのか」「予算と納期はどの程度か」という具体的な要件を明確にすることです。

もし判断に迷われているなら、要件を整理した上で、専門家に相談してみることをおすすめします。弊社は、既存テーマを活用した構築もオリジナルテーマ開発も両方に対応していますので、御社のプロジェクトに本当に必要なアプローチを客観的にご提案できます。

「まだ要件が固まっていない」「どちらが適しているか分からない」という段階でも構いません。要件の整理から一緒に考えることも可能です。お気軽にご相談ください。